2008年07月06日

第44回 日伊声楽コンコルソ

今日、あるコンクールを聴きに行った。
第44回 日伊声楽コンコルソ」というもので、日本ではそれなりに名の通ったコンクールの本選だ。
予選を通過した11名が演奏を披露した。

残念ながら私の応援する人は第3位までの賞をもらうことはできなかった。

第1位はテノール歌手。
持ち声の良さを存分に生かした演奏だったが、単純に高音をはずすことなく出せたから1位をとったのではないかとも思える。
ある人曰く「男声は数が少ないので、難しい音を出せれば入賞できる。審査基準は女声よりも甘い」とか。
楽譜にそう書かれている以上、決められた音を出すのは最低限であり、その上にいかに音楽性を構築するかで演奏の質が決まるのではないかと思うが、今日の第1位の演奏がどうであったかは私には何とも言えない。
ただ音楽性云々はさておき、素人耳には第1位をとってもまあ納得できる演奏ではあったと感じた。
日本に数少ない高音域をしっかり出せるテノール歌手としての活躍を期待する。

第2位・第3位はソプラノ歌手。
これがどうにも腑に落ちない。
「私が応援する人の方がよっぽど…」というと他人には贔屓目に見えるだろうが、さらに言えば「この2人よりもうまい人は他にも…」と感じた。
素人耳の感想を書き並べても恥をさらすだけかもしれないが、一言ずつ述べると…
第2位の歌手はどうにもくぐもったような発声で、客席で聞いていると一枚壁を隔てているようだった。
第3位の歌手はメゾソプラノではないかというような低い声で、中音域の鳴りは比較的きれいだったが、高音域になると喉で押している感じがしてソプラノのソプラノたる所以の音域がきれいでなかった。
前述の通り、私には音楽性云々はわからないので、聞いた感じを素直に受け取っているだけだが、この2名が上位入賞ということはよっぽど音楽性が審査員の好みにあったということだろうか。

で。
このエントリで言いたいのは、私がコンクール結果に不満を持っていることでもなければ、素人耳の感想で恥をさらすことでもない。
審査結果の公表の仕方に疑問を感じていることだ。

私が高校時代にやっていた合唱に始まり、これまでコンクールと名のついたものには何度も足を運んできたが、その多くは審査結果の発表が「結果だけ」でしかない。
今日も審査講評が一応設けられてはいたが、「曲の選び方に気をつけましょう」なんていうメッセージを全体に投げかけるだけ。
その後、結果を発表して「はいさようなら」
これでは5時間も聴いてきた聴衆はもとより10倍ほどの予選をくぐり抜けてきた演奏者も浮かばれない。

まずすべきは複数いる審査員の審査結果(得点や順位)公表である。
審査員達がそれぞれの演奏に対してどのような評価を下したのか。
それぞれからこのような結果が出たので、総合としてこの結果になりましたというのが筋だ。
ボクシングだって判定では「ジャッジ○○30対29赤△△」とそれぞれの得点を発表するではないか。
これを発表せずに総合結果だけでは、裏で何か取引(権力の強い人の一存や出来レース)があったのではないかと疑ってくださいというようなものだ。

さらに、それぞれの演奏に対する評価も出さなければなるまい。
これを聴衆に出すかどうかは別として、少なくともそれぞれの演奏者には「こういう風に評価しました。このようにしてみたらもっとよくなるのでは」みたいなことを伝えるべきだ。
これが数十人も参加する予選ならばそこまでは求めないが、たかだか10人程度の本選なのだからこれぐらいやろうと思えば可能だろう。

出演者は2度の予選や今回の本選に対して、多くの出費をしている。
上記のような見返りがないと何のためにお金を払って審査してもらっているのかわからない。
審査員もお金をもらったプロとして仕事しているからには、責任を持って講評を述べるべきだ。

このようなこともしない日伊音楽協会が「日本のオペラ界を担う人材の発掘・育成を目指して」などとよく謳えたものだ。
あなたたちが何を「育成」しているのですか、と問いたい。
もう一つ言えば、上記のようなことを公開することで、私のような素人で好き勝手いっている人間を教育することにもつながり、日本におけるクラシックに対する見方のレベルを上げることにもつながる。
こういう取り組みをしないままでは、日本におけるクラシックというものがいつまでたっても一部のマニアによる楽しみぐらいにしかとられないだろう。

それにつけても、今日の結果は残念でした。
posted by K大 at 23:59 | Comment(10) | TrackBack(0) | 各種鑑賞
この記事へのコメント
アリスといいます。はじめまして。お書きになっていることに異論はないのですが、すこし角度を変えて考えてみることをオススメします。

コンクールは参加者を採点し、選ぶわけですが、そのことによって同時に、自分たちの、つまりはコンクールそのものの価値が決まってきます。選んだ人たちがその後、何の活躍もしなければ、そのコンクールは質が低いということになりますね。採点の公表は、僕はあってもなくてもいいことだと思います。どっちにしても一長一短があります。問題は、そのコンクールがちゃんとした人を選び、巣立った人がまともに活動しているかです。

このコンクールは、わりとまともな人を選んできていると思いますし、ずっとその傾向が変わりません。

ショパコンの政治性などを見てきているわけですから、多少批判的になることも必要ですが、私は基本的に審査員を信頼していますし、まずはその態度が必要と感じます。それでも、選ばれた人たちが、全然活躍しないのだったら、そのコンクールは駄目だと判断すべきでしょう。

採点を公表しないというだけで、デキレースだ何だというのは、参加者にも、審査員にも、大会を支えている人たちにも失礼ではないでしょうか。軽々にそうした判断をなさるのは、控えるべきではないかと思います。
Posted by アリス at 2008年07月07日 19:39
> アリスさん

このような偏狭な個人ブログに丁寧なコメントをいただきまして、ありがとうございます。

>> 採点を公表しないというだけで、デキレースだ何だというのは、・・・
すいません。字面だけ見れば確かに私がそう考えているととられても仕方ないですね。
私の真意は
 ・私の印象と結果がだいぶん違ったので、後学のため評価を教えていただけないか
 ・出演者にも後々のため評価を伝えてあげた方がよいのではないか
という2点です。
決して、今回のコンクールが出来レースだったとかそういうつもりは全くありません。

乱暴な断定調の言葉使いで煽ったのは、匿名個人ブログによくありがちな「はったり」と、自分の気持ちの強さをストレートに変換した結果だと捉えてください。
決してコンクール関係者を罵るような気持ちはありません。もしそのように捉えられた方がいらっしゃればお詫びいたします。

>> そのコンクールがちゃんとした人を選び、巣立った人がまともに活動しているか
>> わりとまともな人を選んできていると思いますし、ずっとその傾向が変わりません。
言われていることはよくわかるのですが、この世界に造詣の浅い私ではパンフレットにあった過去受賞者の名前を見ても、知っている名前は数人しかおらず実感がわかないです。
また、過去の第2位・第3位受賞者の方も同じように活躍されているのか、私には知らないことが多すぎるので、適切なお返事をすることができません。すいません。

ただ、
 コンクールが選んだ人が活躍した→コンクールの評価は正しかった・質が高い
という論理については、ひねくれ者の私は素直にうなずくことが出来ません。
確かにコンクールの黎明期にはこの論理が成り立つでしょうが、このように歴史を重ねてきたものには違う論理も存在すると考えます。
すなわち
 権威あるコンクールで賞をもらった→援助・出演依頼が増える→(結果的に)活躍する
というものです。

私の好きな話に菊池寛の『形』というものがあります。
ブランドに弱い人が多い日本では権威あるコンクールの賞を持っているというだけで、無差別に「ブラボ」を連発しもてはやす風潮があります。
私のような素人が口を出したり、ミーハーなおばちゃん達がテノールばかりを追っかけている現状にあって、このブランドは無視できない力を持っていると思うのです。

>> 採点の公表は、・・・どっちにしても一長一短があります。
だからこそ、私はコンクールの結果に透明性を持たせる必要があると思うのです。
私のように変に勘違いしている素人にも、アリスさんのような造詣の深い方にとっても、出演者自身にとっても、採点の公表は意味あることだと考えます。

>> 私は基本的に審査員を信頼していますし、まずはその態度が必要と感じます
私も基本的には審査員の判断を信頼しています。
しかし、もっと基本的なスタンスとして「審査員が選んだからこの演奏がすばらしいのだ」という一種の思考停止はしたくないのです。
皆が絶賛していても、自分にとっての良否を確固として持っていたいのです。

ただ、そのまま自分の世界だけで意固地になってしまっては、もっとすばらしいものを見落としてしまうかもしれません。
よって、このような場でプロの目から見た評価を公表してもらい、狭くなりがちな素人の判断に気づきを与えてくれればと願うのです。ひいては日本でクラシック声楽を好む人のレベルが高まることを目論んで。

そういえば、昨年の第1位の方も、今年の第2位・第3位の方も、ソプラノは中低音域をしっかり出せる方が選ばれていたような気がします。
今年の方に対する私の感想はエントリの通りで、高音域をきれいに出せないのはいただけないのですが、これこそがイタリアのベルカントなのでしょうか…。
経験の浅い私にはまだまだわからないことが多いですね。

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自分のブログとはいえ、長々コメント欄に書いて失礼しました。
繰り返しになりますが、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。
Posted by K大 at 2008年07月07日 22:33
ぶしつけなご提案ながら、真面目に考えていただいたようで、ありがとうございます。山路さんはもちろんご存知だと思いますが、この大会の入賞者を調べてみると、その後の国内外で、トップ・クラスの歌手・教師として活躍している人が多いし、外国に出ていった人もいます。二期会/藤原の両方に人材を提供しているのもポイントです。

コンクール後の活躍で、コンクールの質が定まるというのは、確かに留保付きの論理です。黎明期というよりは、飽和期だからこそ、問題なのです。いまのコンクールは、コンクールの権威そのものに疑問符がつき始めたため、アフター・サーヴィスでコンクールの質を高めようとしているからです。結局のところ、仰るように、ただどんな順位で、その後、どんな公演に出たかだけではなく、足繁く公演に通い、あの結果が妥当だったかどうかを確かめるほか、方法はなさそうです。

そういうことを踏まえて、私見では、日伊の入賞者はそれなりに信用できると考えています。

また、コンクール中のマスター・クラスや、審査員のアドヴァイスを受けられることを目当てに、コンクールを受ける人もいるようです。そういう面でいうと、日伊、イタリア声楽コンコルソは、参加者には受けのいいコンクールのようですね。舞台上では述べられませんが、そういう点は、予選などの段階で参加者に伝えられているそうで、本選までにアジャストできることもあると聞いています。

採点については、公開と非公開のどちらが審査員にとって、本当のことが言いやすい環境なのかというのは難しい問題だと思います。フィギュア・スケートでは採点は公表するが、どのジャッジの点かは非公開。スキーのジャンプでは、5人の飛形点ジャッジの最高点と最低点をカット。WBA(ボクシング)では全員の採点を公開するようになりましたが、どれがいいかはよくわかりません。
Posted by アリス at 2008年07月08日 20:14
重ねての丁寧なコメントありがとうございました。

この世界に興味を持ち始めたぐらいの若輩者の私では、まだまだコンクールと実際の活躍を結びつけて捉えることができていませんが、いただいたコメントを心に留めながら、今後オペラやコンクール等を楽しんでいきたいと思います。

採点については、採点集計のやり方についてはそれぞれのコンクールの考え方でよいと思ってます。
公表については、理想を言えば、プロとして審査員氏名公表の上の得点公開がうれしいですが、やりにくさがあるのであれば匿名での得点公開でも、一観客の私としては満足です。

##
私も時折オペラを観に行きますが、やはり周りを見ると若い人が少ないように思います。
どの文化公演(オペラ・歌舞伎・能・落語…)も似たようなものかとは思いますが、いろんな年代の人と楽しさを共有できるように、守るべきものは守り、変わるべきものは変わって、全体としてよりよい方向へ向かっていければいいですね。
Posted by K大 at 2008年07月08日 23:31
いまさら実力云々...ではないでしょう。

仮に審査員の弟子や主催者にコネのある人が予選通過・本選進出しているとすれば、このコンクールがデキレースである疑いは濃厚なんですけどね。

そこらへん、お調べになってはいかがでしょうか?ちょっと難しいでしょうけど。
Posted by デキスギレース at 2009年10月20日 19:41
日伊声楽コンコルソ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日伊声楽コンコルソ(にちいせいがくコンコルソ)は、読売新聞社が主催する声楽コンクール。1964年創設。審査委員長は元昭和音楽大学学長、五十嵐喜芳。

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受賞者の来歴(参考情報)

第46回日伊声楽コンコルソ第二次予選(2010年6月13日開催)通過者12名の声種・学歴と、本選の結果。

本選1位 ソプラノ* 東京芸大
本選2位 バリトン* 東京芸大
本選3位 バス 武蔵野音大
入選
ソプラノ 6名(東京芸大1名*、東京芸大4名、東京音大1名)
テノール 2名(東京芸大1名*、徳島文理大1名)
バス 1名(名古屋芸大)

*=第46回日伊声楽コンコルソの公表された審査員のうち、少なくとも一名に声楽実技を師事した者(判明分のみ)。
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第45回日伊声楽コンコルソ第二次予選(2009年6月13日開催)通過者10名の声種・学歴と、本選の結果。

本選1位 テノール 東京芸大
本選2位 ソプラノ 東京芸大
本選3位 メゾソプラノ 東京芸大
入選
ソプラノ 4名(東京芸大2名*、東京芸大1名、昭和音大1名)
メゾソプラノ 1名(東京芸大*)
バリトン 1名(昭和音大)
バス 1名(武蔵野音大)

*=第45回日伊声楽コンコルソの公表された審査員のうち、少なくとも一名に声楽実技を師事した者(判明分のみ)。
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第44回日伊声楽コンコルソ第二次予選(2008年6月14日開催)通過者11名の声種・学歴と、本選の結果。

本選1位 テノール 東京芸大
本選2位 ソプラノ 東京芸大
本選3位 ソプラノ 東京芸大
入選
ソプラノ 7名(東京芸大1名*、東京芸大1名、昭和音大2名、国立音大1名、武蔵野音大1名、啓明大1名)
テノール 1名(国立音大)

*=第44回日伊声楽コンコルソの公表された審査のうち、少なくとも一名に声楽実技を師事した者(判明分のみ)。
---------------------------------

第43回日伊声楽コンコルソ第二次予選(2007年6月16日開催)通過者10名の声種・学歴と、本選の結果。

本選1位 ソプラノ* 昭和音大
本選2位 ソプラノ 国立音大
本選3位 ソプラノ 東京音大
入選
ソプラノ 4名(東京芸大2名*、昭和音大2名)
テノール 2名(東京芸大1名、国立音大1名)
バス 1名(玉川大)

*=第43回日伊声楽コンコルソの公表された審査員のうち、少なくとも一名に声楽実技を師事した者(判明分のみ)。
Posted by Wikipedia at 2010年12月28日 00:05
イタリア声楽コンコルソ
「イタリア国立音楽院へ推薦入学」の虚偽

主催者発行の参加規程によれば、「シエナ大賞100万円、ミラノ大賞100万円。両大賞の優勝者は、イタリア国立音楽院へ推薦入学することができる。上記の両大賞は、一年以上のイタリア国立音楽院留学資金として贈られるもので、翌年度の留学を辞退したときは、両大賞とも留学資金を受ける資格を失う」。

ところが実際には、イタリアの国立音楽院(conservatorio di musica)の正規課程に、民間団体主催の声楽コンクール受賞者を推薦入学させる制度は存在しない。

つまり、「両大賞の優勝者は、イタリア国立音楽院へ推薦入学することができる」との記述は事実に反するものである。コンコルソ主催者が受賞(候補)者にイタリアでの音楽院入学を保証できる制度上の根拠はない。
Posted by 牧さん at 2011年06月09日 23:46
イタリア声楽コンコルソ
授賞規程の矛盾

コンコルソの受賞(候補)者が前項の参加規程にもとづき賞金獲得を希望する場合には、国立音楽院の入試手続きを済ませ、現地での試験に合格せねばならない。

コンコルソ主催者からの推薦の有無には関係なく、入試に不合格ならば賞金は受け取れない。

さて、参加規程でいうところの「両大賞」が「留学資金」そのものだとすれば、国立音楽院に不合格となった受賞(候補)者は「留学資金(=大賞)を受ける資格を失う」、すなわち「大賞」の授与自体を取り消される結果となる。

この矛盾について、コンコルソの参加規程には何らの説明もなされていない。
Posted by 牧さん at 2011年06月09日 23:47
イタリア声楽コンコルソ
賞金授与実績の不透明

コンコルソ主催者は、過去における受賞(候補)者の氏名と顔写真をホームページに掲載している。

ただし、これら受賞(候補)者の国立音楽院への入学実績や、これまでに授与した賞金額などは一切公表していない。
Posted by 牧さん at 2011年06月09日 23:48
主催者が実績書けないのは

看板と中身がまったく違うから

留学資金はイタリアに行ってから後払いの約束だけれど

払われる保証はどこにもない

留学の書類手続きも費用負担も全部とりあえず受賞者の自前で

これがイタリア声楽コンコルソにありがちな「現実」です

http://blog.goo.ne.jp/hisae216/e/4a89907d19e8c958b3288b7d950060af
Posted by イタリア声楽コンコルソ受賞者 at 2011年06月09日 23:49
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