2005年12月07日

《本》『名将たちの指揮と戦略』

最近読んだ本から
といっても,これを読んだのは結構前ではあるが….

タイトルは「名将たちの指揮と戦略」.著者は松村劭.

Amazonから引用

『絶対不可欠な資質は想像力である』――名将が残した金言の中から、戦略の立て方など、勝つために必要なリーダーシップのあり方を探る。


ある日,大学生協で指定文庫本を3冊以上買うと15%OFFというセールをやっていた.
2冊まではすぐに決まったが,どうも3冊目に魅力的本がない.
何となく,ナポレオンの言葉とイラストが描かれた帯に惹かれ,この本を3冊目とした.この本は「はじめに」にあるように『引用することが目的』である.
つまり,古今東西の軍事関係を中心として,強烈なリーダーシップを発揮した人の著作・名言を引用することが目的なのである.
一般の本とは性質が大分異なる.

人生は決断の連続である.
そして,決断に伴う実行があって初めて現状に変化が生まれる.
決断,もしくは判断・評価しかしないのが,マスコミを中心とした評論家群であり,現場では何の役にも立たない.
ビジネスの現場であろうが,戦場であろうが,常に実行を伴う決断を下し続けることがリーダーとしての資質であり,必要条件でもある.
戦場という人間としてぎりぎりの判断を求められる環境でもなお,リーダーシップを発揮し続けてきたいわゆる「名将」たちの言葉は,現代のリーダーにもきっと役立つものであろうというのが本書のスタンス.

数多くの言葉が引用され,一応それらに対して解説があるが,特別 現代の事情に当てはめて「こう解釈すべきだ」などとは書いていない.
当時の状況とか発言した人の解説とかそんなものばかりで,むしろ「現代に当てはめてみる」的な話はほとんどないと言ってもよい.
どのようにすぐれた言葉であっても,読み手の現状にどう適応できるかは,それこそ読み手の経験に寄るところが大きい.

このような書物は読み手によって,役に立つ場合もあるし,無駄なものに終わる可能性もある.
私のように経験も想像力も乏しい人間にとっては,多くがトリビア的な知識に終始してしまって,自分の実となる部分は少なかったと思う.

それでも印象に残った部分を挙げる.
近年のアジア(特に中国・韓国)に対する,日本の弱腰外交に関して次のマキャベリの言葉を紹介している.
次の二つは絶対に軽視してはならない.
第一は,寛容と忍耐を以てしては,人間の敵意は決して溶解しない.
第二は,報酬と経済支援などの援助を与えても敵対関係は好転しない.
                          君主論 1532

では,どうすればよいのかについての記述はなかったが,500年弱前の人間が今の日本とアジアの関係を言い当てたような言葉を残しているのは驚きだ.
この言葉の是非はともかく,さすが自衛隊出身である著者のシビアな国際関係観が顕著に表れている.

著者は本書等によりリーダーシップを学ぶことを,『その人は大勢の人々とともに行動するという潜在意識を持っている』ことであると言っている.
以前書いた,小林よしのり関連本でも度々指摘されてきたことだが,今の日本人,特に若者の間で『個人主義』という名の『自己中心主義』思考が広がっていることは恐ろしいことだ.
「売春」を「援助交際」と言い換えるのと同じぐらい,悪質な言い換えであると感じる.

『個人主義』が本当に成立するためには,人間が皆等しく,十分に聡明で強く,無欲で勇敢である必要がある.
しかし,実際の人間は,頭脳も肉体も弱く,強欲のためなら悪も受け入れるが,責任を怖がる卑怯者が多い.

世界のために自分があると考えるのがリーダーシップの基本的考え方だ.
『個人主義』のように,他人の心情を考えずに,まるで自分のために世界があるかのような振る舞いは,社会を暗くするばかりである.
こういう人間に対して,本書がそれを矯正する役に立てば…,と著者は締めくくっているが,正直,ちょっとこの本では難しい.
しかし,そのような全体の中の自分を意識させるような教育は絶対に必要であろうと私も強く感じる.
posted by K大 at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本を楽しむ
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